このページの要点
- 調光方式はDALI を第一選択に。回路を分けずに個別制御でき、制御盤が小さくなり、後からのグループ変更もプログラムだけで済む
- 位相・PWM・ON/OFF は「1回路 = 1制御単位」。個別に調光したい器具グループは基本設計の段階で固め、実施設計で回路分割計画として確定する
- PWM は性能・施工の手間・コストの3点から、できるだけ避けたい調光方式
電源と信号の経路 ― まず物理構成を知る
Lutron HomeWorks の照明制御は、調光方式によって 100V 電源の経路と制御信号の経路が異なります。
100V 電源の経路
- ON/OFF・位相・PWM 器具の 100V は、必ず Lutron 制御盤を経由します。そのため、分電盤側にこれらの器具用の独立した 100V 回路が必要になります
- DALI 器具の 100V は Lutron 制御盤を経由せず、分電盤から直接配線します
- PWM の場合は、Lutron 制御盤から 100V と PWM 信号線がそれぞれ照明器具の回路に接続されます
制御信号の経路
DALI 器具と PWM 器具には、Lutron 制御盤から DALI 信号線・PWM 信号線が接続されます。
各階層の責任ロール
| 区分 | 主な役割 | 設計責任 | 施工 |
|---|---|---|---|
| 分電盤 | Lutron 制御盤への独立 100V 供給、DALI 器具への 100V 給電、ON/OFF・位相・PWM 器具用の各回路の確保 | 電気設備設計者 | 電気工事業者 |
| Lutron 制御盤 | ON/OFF・位相・PWM 器具の 100V 経路、DALI・PWM 器具の信号制御 | インテグレーター(盤設計) | 電気工事業者 |
| 各照明器具 | 実際に発光する負荷 | 照明デザイナー(選定) | 電気工事業者(器具が支給品の場合の取付区分は、プロジェクトごとに確認) |
調光方式の種類とコスト構造
Lutron HomeWorks が制御できる調光方式は次の4つです。調光方式の選定は照明デザイナーの責務です。
| 方式 | 配線 | 制御単位 | コスト | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| DALI | 100V 電源は別系統 + DALI 信号線2芯 | 信号アドレス単位(配線分割不要) | 最も低い | 第一選択。対応器具がある場合はこれを選択 |
| 位相制御 | 制御盤からの VVF | 1回路 = 1制御単位 | 中 | 意匠性の高い照明器具(シャンデリア、ペンダント等) |
| ON/OFF | 制御盤からの VVF | 1回路 = 1制御単位 | 中 | 調光不要の器具(外灯・倉庫灯など) |
| PWM | 制御盤からの VVF + PWM 信号線2芯 | 1回路 = 1制御単位 | 高 | DALI 非対応の調光 LED 器具(可能な限り回避) |
DALI が日本に普及するまでは PWM 調光の器具がよく利用されていましたが、スマートホームプロジェクトでは性能・施工の手間・コストの3点から、できるだけ避けたい調光方式です。
なぜ DALI を第一選択とするのか
DALI は調光信号がデジタルで、1本の信号線で最大64台までの個別アドレス制御ができます。これにより、
- 制御単位ごとに回路を分ける必要がありません → 分電盤側の回路数を削減できます
- 制御盤の出力モジュール数を大幅に減らせます → 制御盤がコンパクトになります
- 後から「この器具だけ別グループにしたい」となっても、配線変更なしで、プログラム変更だけで対応できます
という点で、他の調光方式(位相・PWM 中心)の計画と比較してコスト削減が見込めます。
ON/OFF しか行わないエリアであっても、DALI 対応器具を使うほうがコスト削減になります。ON/OFF 制御用の出力モジュールが不要になるためです。
DALI を選択できないケース
- 器具が DALI 非対応
- 既製品指定で変更できない
この場合は、位相制御/PWM/ON/OFF のいずれかを選定し、次に述べる回路分割計画を作成します。
調光方式別の配線と責任担当
ON/OFF・位相制御の場合
100V は「分電盤 → Lutron 制御盤 → 照明器具」の順に VVF で配線されます。
| 項目 | 担当 |
|---|---|
| 制御単位(どの器具群を1回路にまとめるか)の決定 | 照明デザイナー |
| 出力モジュールの選定(負荷・容量に応じて) | インテグレーター |
| 分電盤から Lutron 制御盤への回路割り当て設計 | 電気設備設計者 |
| VVF 仕様(サイズ・芯数)の電気的判断・配線ルート設計 | 電気設備設計者 |
| Lutron 制御盤から器具までの VVF 配線施工 | 電気工事業者 |
位相制御は、配線の本数でしか制御単位を分けられない方式です。たとえば「リビングのダウンライト4台のうち、奥の2台だけ別に調光したい」と後から言われても、奥の2台が別回路で配線されていなければ実現できません。
このため、照明デザイナーは個別に調光したい器具グループを基本設計の段階で固めておく必要があります(回路分割計画は、基本設計で暫定版を作成し、実施設計で確定します)。施工開始後の変更は、配線のやり直しになります。意図する制御単位ごとに回路を分ける論理設計(回路分割計画)は照明デザイナーの責務で、電気設備設計者はこの計画を受け取って、分電盤から制御盤への回路割り当てを設計します。
DALI の場合
100V 電源は「分電盤 → DALI 器具」へ直接、信号は「Lutron 制御盤 → DALI 器具」へ DALI 信号線で配線されます。
| 項目 | 担当 |
|---|---|
| DALI 対応器具の選定 | 照明デザイナー |
| 分電盤から DALI 器具への 100V 電源の回路設計(制御盤を経由しない) | 電気設備設計者 |
| DALI 系統の並列分岐設計(直列20台未満) | 電気設備設計者 |
| DALI 信号線の配線ルート設計 | 電気設備設計者 |
| 分電盤 → DALI 器具の 100V 電源配線施工、DALI 信号線の配線施工 | 電気工事業者 |
100V 電源を制御盤に通さないため、制御盤を小型化でき、配線本数も大幅に削減できます。
PWM の場合
100V は「分電盤 → Lutron 制御盤 → 照明器具」の順に配線され、制御盤から器具までは VVF に加えて PWM 信号線2芯が必要です。
| 項目 | 担当 |
|---|---|
| 制御単位の決定 | 照明デザイナー |
| 出力モジュールの選定 | インテグレーター |
| VVF + 信号線の仕様判断・配線ルート設計 | 電気設備設計者 |
| Lutron 制御盤から器具までの VVF + 信号線の配線施工 | 電気工事業者 |
位相制御と同様に「1回路 = 1制御単位」です。照明デザイナーによる回路分割計画が前提となります。
DALI 配線のルール ― 設計者が知っておくこと
DALI 配線は、施工方法を誤るとシステム全体が正常に動作しなくなります。系統分割の設計は電気設備設計者、施工は電気工事業者の担当ですが、設計者の方も要点を押さえておいてください。
- 直列接続は20台未満:DALI 信号線を一筆書きで多数の器具に渡る配線にすると、器具の内部抵抗の合計が高くなり、信号レベルが低下して正常に動作しなくなります
- 20台以上になる場合は並列分岐:配線経路上の任意の位置で並列分岐して系統を分けます。分岐位置は制御盤側・中継ボックス内・天井裏など、施工しやすい場所で構いません
- 信号線の仕様:CPEV-S 1.2φ(極性なし)。配線の最大総延長は 300m が上限です(DALI 規格上の制限。超過時は信号劣化により動作保証外)
- 離隔距離:100V 電源線と並走する場合は、ノイズ対策として離隔距離に注意します
| 項目 | 担当 |
|---|---|
| DALI 系統分割・並列分岐の設計(どの器具を1系統にまとめ、どこで分岐するか) | 電気設備設計者 |
| 分岐位置の現場施工(中継ボックス等) | 電気工事業者(電気設備設計者と協議) |
施工上の詳細は、電気工事業者向けの 配線ルール をご覧ください。
システムが止まったときのことを考えておく
Lutron システムが動作しない状況(プロセッサ故障時、盤一次側のブレーカ遮断時など)では、分電盤のブレーカ単位でしか照明の ON/OFF ができない状態になります。このため、分電盤の回路分割は、Lutron が使えない状態でも最低限の生活照明を確保できる単位で計画する必要があります。
たとえば、1階全室の照明を1つのブレーカに集約すると、Lutron のダウン時に1階全域が同時に点灯・消灯してしまいます。最低でもフロア・ゾーン単位で分割し、寝室系統と共用系統は別ブレーカとするなど、緊急時にも生活が破綻しない分割を、電気設備設計者が分電盤構成を設計する際に組み込みます。
役割分担の全体は 4者の役割分担 をご覧ください。